誤認された動画の発端
2026年10月下旬、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相がテルアビブで武装した襲撃者に身体的暴行を受けたと主張する衝撃的な動画クリップが、SNS上で拡散されました。添えられたキャプションには、10月27日のクネセト総選挙の直後に首相が重傷を負い、米国へ緊急空送するための特別機が手配されたと記されていました。しかしながら、この映像はベンヤミン・ネタニヤフやテルアビブ市、さらには昨今のイスラエル政情とも一切関係がありません。
2013年にブルガリア・ソフィアで起きた事件
記録文書および動画の検証により、このクリップは2013年1月19日にブルガリア・ソフィアの国立文化宮殿で発生し、広く報じられたセキュリティ侵害事件を捉えたものであることが確認されています。演台で発言していた人物は、テレビ生中継されていた党大会で演説を行っていたブルガリアの政党「権利と自由運動」の長年の指導者、アフメト・ドガンでした。その演説中、オクタイ・エニメフメドフと特定された25歳の男が壇上に駆け上がり、ドガンの頭部にガス銃を突きつけました。
襲撃犯が引き金を引いたものの、銃は不発に終わりました。ドガンが襲撃犯の手を払いのけると、代議員や大会出席者、警備員たちが男を取り押さえ、制圧しました。ドガンに怪我はなく、無事に会場から避難誘導されました。この事件は当時、ソフィアから報じたロイターの報道をはじめ、国際的な通信社によって大々的に報じられました。
使い回される偽情報キャンペーン
この2013年のブルガリアでの映像は、様々な国で政治的に大きな注目が集まる局面において、誤ったキャプションを付けられてオンライン上で繰り返し再拡散されてきました。2024年2月には、同じ映像を別の世界各国の指導者への襲撃事件として偽った拡散事例について、ロイターによるファクトチェックで検証されています。そして2026年10月下旬、スノープス(Snopes)のファクトチェック記事で詳細に報告されている通り、まったく同一の動画がテルアビブでネタニヤフが襲撃されたかのように偽るテキストを重ねられた上で、再びSNS上に出回りました。
選挙後に確認されている公式日程
公式の放送中継やメディア報道によって、2026年の議会選後にネタニヤフが暴行を受けたり入院したりした事実はないことが確認されています。ロイターやFOXニュースが報じた通り、ネタニヤフは2026年10月28日にエルサレムから公に政治演説を行い、総選挙の結果と連立協議について言及しました。その後の数日間を通じても、ネタニヤフは通常の政府公務を遂行し、予定されていた外交電話会談を行い、イスラエルのイツハク・ヘルツォグ大統領が招集した選挙後の協議にも出席しており、物理的暴力による混乱などは一切生じていません。